プログラミング
プログラミング的思考とは?5つの種類や論理的思考との違い、身につけ方を解説
プログラミング
小学校・中学校や高校で「プログラミング学習」が導入され、大人や保護者の方の間でも「プログラミング教育」というキーワードをよく耳にすることがあるかもしれません。
AIやデジタル技術が発展し、社会がものすごいスピードで変化する中で、今後未来を担う子供たちには新たなスキルが求められています。その一つが「プログラミング」です。日本では2020年から学校教育で「プログラミング教育」が必修化されました 。
プログラミング教育を受けてこなかった保護者の方にとって、さまざまな疑問や不安を抱いている方も多いのではないでしょうか?
実際に小学校や中学校の保護者に 「プログラミング教育」が必修化されたことについて知っているのか、認知度アンケートをとったところ、全体の約6割が「詳しい内容を知らない」と回答しています。
・参考:みんなのコード 2022年プログラミング教育 実態調査報告書より
先に伝えておくと、プログラミング教育(特に小学校)では、子供たちにコードを書くスキルを身につけるわけではありません。論理的思考や問題解決能力、創造性を育てていくことを目的に授業が行われています。しかし、なぜこの教育が今必要なのでしょうか?
この記事では、教育で大きな注目を集めている「プログラミング教育」とはなんなのか、なぜ重要なのか、教育の目的・ねらいと必要性、どんなスキルが身につくのか、実際の授業事例など、さまざまな視点から深掘りしていきます。 また、家庭学習のコツや人気の無料学習ツールと大手が運営するプログラミングスクールの紹介などプログラミング学習に役立つ情報も紹介しています。
プログラミング教育がお子さんたちにとっていかに重要であるかを理解していただき、お子さんのプログラミング学習のサポートに役立ててみてください。
1. プログラミング教育とは?
1−1.プログラミング教育の意味・定義
1−7.文科省の取り組み・プログラム
2−3.プログラミング教育の必要性とは?
3−1.プログラミング的思考
3−2.想像力や創造性
3−3.コミュニケーション能力
3−4.情報モラルやリテラシー
3−5.ICT機器の取り扱い方法
4−1.パソコンやコンピューター
4−2.タブレット端末
5−1.プログラミング教育×各教科(算数・理科・総合・国語・家庭科・社会・総合)
6−1.小学校の教育内容と実践例
6−2.中学校の教育内容と実践例
6−3.高校の教育内容と実践例
6−4.特別支援学校の実践例
6−5.フリースクールの実践例
6−6.【参考】大学の実践例
7−1.佐賀県武雄市
7−2.東京都渋谷区
7−3.宮城県
7−4.【2024年度版】 全国市区町村公立学校情報化ランキング
8−2.民間企業
8−3.学会や研究
8−4.NPO法人
9.家庭でプログラミング学習を取り入れるべき理由と実践ポイント
9−2.家庭学習の実践ポイント
10−1.ツールを活用した学習
10−3.アンプラグド教材やおもちゃ
10−4.プログラミングゲームソフト
10−5.プログラミングを学べる本
10−6.学習アプリ
10−7.プログラミングスクール
11−1.Scratch(スクラッチ)
11−2.Viscuit(ビスケット)
11−3.Code.org(コードオルグ)
11−4.MakeCode(メイクコード)
11−5.micro:bit(マイクロビット)
11−6.プログラミングゼミ
11−7.プログル
12−1.プログラミング教育 hallo
12−2.サイバーエージェント Tech Kids School (テックキッズスクール)
12−3.サイバーエージェントグループ QUREO(キュレオ)
12−5.Life is Tech ! School(ライフイズテック スクール)
12−6.コードオブジーニアスジュニア
12−7.富士通オープンカレッジF@IT Kids Club
12−8.デジタネ
13−1.ジュニア・プログラミング検定
13−2.プロ検 プログラミング能力検定
13−3.日商プログラミング検定
14.教員向けおすすめプログラミング教育の教材・ポータルサイト
14−1. 有名プログラミング教育の教材・ポータルサイト
14−2.その他先生向けプログラミング教材
15.【関連情報】プログラミングに関するコンテスト・ワークショップ・イベント情報
15−1.コンテスト・大会
15−2.ワークショップ
15−3.その他イベント
16−2.ICT機器の利用頻度
16−3.実践的なプログラミングスキルについて
17.まとめ
プログラミング教育とは、簡単なプログラム体験をする中で、プログラムの仕組みや動作を理解して、論理的思考力や創造力・表現力を育てることを目的とした教育のことです。いきなりプログラミング言語を学ぶのではないので安心して下さいね。小学校では算数や総合など、通常の授業でプログラミング教育が取り組まれています。授業ではプログラミングに必要な考え方(プログラミング的思考力)やコンピュータの使い方を学ぶ機会が取り入れられています。
この「プログラミング的思考力」とは、プログラムの作成や設計時に使う考え方を応用した思考力のことで、エンジニアやプログラマーなど限られた業界だけではなく、IT・デジタル化社会において、誰もが身につけるべき必要なスキルとされています。
プログラミング教育は、急速に進むデジタル社会に対応できる人材を育てるために必修化されたもので、プログラミングの基本スキルだけでなく、データの分析やAIの活用方法といった情報学習も含まれています。子供たちに早くから情報技術に触れさせることで、将来の職業選択の幅を広げて、情報社会で必要とされる能力を備えた人材に育成することが期待されています。
日本では、2020年に小学校、2021年に中学校、2022年に高校と段階的に必修化されましたが、教える人(教員)の人材・スキル不足や、自治体によって教育格差があるなどまだまだ課題が残っているのが現状です。
そこで、先生やお子さん・保護者の方にプログラミングへの興味・関心を持ってもらうため、文部科学省や国・自治体がプログラミングの研修やイベント・コンテストのサポートなど、さまざまな形でプログラミング教育を広める活動を行っています。また民間企業やNPO法人が協力してプログラミングの特別授業やワークショップを開くなど、学校だけでは実現できなかった新しい授業やプログラミングに触れる機会も増えつつあります。
プログラミング教育の意味や定義について、文部科学省では以下のように定義しています。
各教科等の特質に応じて、児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動や、プログラミングを体験しながらコンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動
・引用:文部科学省「新学習指導要領のポイント(情報活用能力の育成・ICT活用)」(pdf)
ようするに、プログラミング教育とは、各教科の特徴に合わせた課題を通して、パソコンの基本操作やプログラミング学習を行い、そこで論理的思考力や問題解決能力を身につけていく学習のことです。 論理的思考力や問題解決能力は将来さまざまな職業分野に応用できるとされています。
プログラミング教育がはじまった背景には、AI技術の発達による新しい社会(Society 5.0)が生まれつつあること、少子高齢化問題(子供の数が減って高齢者が増える社会)などが関係しています。
◼︎1. 技術革新の急速な発展
2022年:ロボット技術の社会進出
2025年頃:「AI(人工知能)」が人間の代役となる
2030~2040年頃:ヒトと機械が共存・協調する社会になる?
→ 生きていくためには、技術革新に対応できる人材を育てる必要がある
◼︎2. 人口減少と高齢化社会
日本では今後2100年までは急激な人口減少と高齢化社会になる 。
→ 働く人が減る中で、生産性を上げるためにはIT技術を使って効率よく業務できる人材が必要
◼︎3. 新たな社会「Society5.0 ※」の到来
新しい価値やサービスが登場し、人々に豊かさをもたらす新たな社会「Society5.0」がやってくる。そうなると私たちのくらしやはたらき方も変わってしまうのでは?
(今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高くなっている!)
→ AIやIoTなどの技術活用できるようにするためにはプログラミング教育がポイント
IT技術の進化で、社会や人々の生活が大きく変化し、将来の予測が難しくなった社会にも適応できる力(情報や情報技術を主体的に活用していく力や、情報技術を手段として活用していく力)を身につけさせよう!ということから、プログラミング教育は始まっています。 ITを活用する力は、今後も私たちの社会で必要不可欠な存在で、プログラミング教育や情報教育というのはこれからますます重要になっていくと考えられます。
日本が掲げる未来の社会のこと。私たちが今いる社会は「情報社会」と言われていますが、これまでに狩猟(Society 1.0)>農耕(Society 2.0)>工業(Society 3.0)>情報(Society 4.0)と4つの時代が進化してきました。そして情報社会の次にくるであろう新しい社会を「Society 5.0」と呼んでいます。Society 5.0では、デジタル技術やAI、IoT、ロボティクスなどを使った社会と予測されており、これらの先端技術をつかいこなせる人材が必要とされています。
プログラミング教育で、どういった学習をするのか、教育の目的や狙いなどを取りまとめた資料があります。それが文部科学省の「新学習指導要領」です。
新学習指導要領とは、2020年に適用された日本の教育カリキュラムで、お子さんが育む資質・能力として「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の3つの柱を挙げています。その中の「思考力、判断力、表現力等」がプログラミング教育と関わりがあります。 子どもたちに、コンピュータリテラシーを高めることを目標に、各学校で指導要領の内容に沿って、独自の教育カリキュラムや学びの方向性を決めて授業を行っています。
プログラミング教育に関する論文や調査レポートも多く発表されています。
◼︎文部科学省が出している調査資料
・市町村教育委員会における小学校プログラミング教育に関する取組状況等調査
・教育委員会等における小学校プログラミング教育に関する取組状況等
・学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果
◼︎企業や組織が出している調査資料
・一般社団法人日本産業技術教育学会「 中学校プログラミング教育の実態調査の報告」
・みんなのコード「2022年 プログラミング教育 実態調査報告書」
・MMD研究所 「2020年1月 小中学生のプログラミング教育に関する意識調査」
◼︎世界の調査レポート
・OECD(経済協力開発機構)「PISA2022」
このほかにも、調査レポート資料はたくさん公開されています。プログラミングに関する調査資料をチェックしておくことは、日本のプログラミング教育への理解を深めるだけでなく、お子さんの学習サポートや将来のキャリア選択に役立つ情報を見つけることができますよ。
日本のプログラミング教育は、2017年に小学校・中学校対象の新学習指導要領、2018年に高校を対象とする新学習指導要領が発表されて、2020年から本格的に始まっています。実際にスタートしたタイミングは、小中高でバラバラで、小学校は2020年、中学校は2021年、高校は2022年に(選択制だった『情報Ⅰ』が必修化)必修化されています。さらに、2025年1月には大学入学共通テストで『情報Ⅰ』が追加されます。
そのため、今後は文系や理系を問わず、大学進学を目指すすべての学生がコンピューターやプログラミングの勉強をする必要があります。
プログラミング教育が必修科されて数年が経ちましたが、現在はどうなっているのでしょうか?教育が浸透しているのかなども気になりますよね。
結論から言うと、プログラミング教育は少しずつ浸透しつつある一方で、さまざまな課題や問題点があります。そこで、日本のプログラミング教育の現状と、課題や問題とされている点について解説していきます。
まずは、日本のプログラミング教育の現状について、みんなのコードが発表した「2022年度プログラミング実態調査」のデータを使って解説していきます。
◼︎調査日
小学校2023年2月
中学校2022年11月〜12月
高等学校:2023年2月〜4月
◼︎対象者
小学校教員1,037名
中学校教員1,362名
小学生・中学生・高校生およびその保護者 3,000組
今回は、実態調査報告書にあった、「プログラミング授業の実施率」「プログラミング教育で使用している教材」「プログラミング教育の指導計画の作成状況」のアンケート集計結果を紹介します。
小学校でのプログラミング教育の実施率についてですが、「過去に実施したことがあり、今年も実施予定(または実施済み)」の回答が前回よりも多く、41.7%という結果でした。
▶︎参考:プログラミング教育の実施率
▶︎直近1年間でプログラミング教育に触れた時間
実際に授業で使用している教材やツールについて調査した結果、特に多かったものが、以下の4つです。
次に、「プログラミング的思考を含めた情報活用能力に関する指導計画を作成していますか?」というアンケートで、全体の約4割が「学校が作成していて、それに従っている」、その次に「学校としての計画はないため、教員同士で方向性を決めている」の回答でした。
ここからは、プログラミング教育がはじまってから見えてきた課題や問題点を3つ紹介します。
まず1つ目の課題は、全体的に教員の人数が少ないことと、先生の知識不足です。
文部科学省が2021年に調査した「教師不足」に関する実態調査では、全国の公立小学校・中学校・高等学校と特別支援学校において教師が2,065人も不足していることが明らかになっています。(学校数でいうと1,591校)
【教師の不足人数と不足率(2021年5月1日時点)】
・小・中学校:1,701人(0.28%)
・高等学校:159人(0.10%)
・特別支援学校:205人(0.26%)
プログラミング教育を担当する先生がプログラミングやITの知識を持っていない背景には、プログラミング教育に必要なスキルを習得するための研修やトレーニングの機会が十分になかったという問題があるのではと推測しています。特に地方の学校では、研修に参加する機会も少ないケースが多いです。
なお、文部科学省が調査した「令和6年2月13日 中学校技術・家庭科(技術分野)の指導体制の一層の充実について(通知)」では、中学の技術・家庭科(技術分野)の先生のうち、約23%が正式な免許を持っていないことと、専任の指導主事(学校の先生たちを助けるために働いている先生の先生)を置いていない都道府県が10自治体あることがわかりました。
2つ目の課題点として、教材やカリキュラムが標準化されていないことです。
プログラミング教育を行う上で、教材やカリキュラムが必要ですが、小学校プログラミング教育の手引きでは、以下のように書かれています。
カリキュラム・マネジメントの重要性
『プログラミング教育のねらいを実現するためには、各学校において、プログラミングによってどのような力を育てたいのかを明らかにし、必要な指導内容を教科等横断的に配列して、計画的、組織的に取り組むこと、さらに、その実施状況を評価し改善を図り、育てたい力や指導内容の配列などを見直していくこと(カリキュラム・マネジメントを通じて取り組むこと)が重要です。』
・引用:文部科学省「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」
ようは、「学校ごとでカリキュラムや教材を決めてくださいね」とされています。元々日本では地域や学校ごとに教育カリキュラムをつくることが多く、プログラミング教育も例外ではありません。そういった背景から教材やカリキュラムの標準化が難しいのが現状です。
3つ目に、各学校や自治体によってプログラミング教育への力の入れ方に差があることです。
文部科学省の先進校として選ばれた学校では、他の学校よりも先駆けて高度なプログラミング教育を受けています。また地域の企業とのつながりがある自治体や学校では、企業から最新のプログラミングツールやソフトウェアの提供や、エンジニアやプログラマーが直接学校に来て特別授業が開かれているといったニュースも見かけます。ですが、一部の学校・自治体だけの話で、全ての学校で実施されているわけではありません。
自治体によって教育にかけられる予算が限られていることや、企業とのつながりがない(機会がない)といった学校は、どうしても学校でできる最低限のプログラミング教育しかできません。
このように、 先進的な取り組みを行っている学校や自治体がある一方で、他の学校や自治体では、まだ十分な準備が整っていないなど教育の格差が生じています。
また参考までに、2024年度プログラミング実態調査で全国の小学校先生に「学校・教育委員会からのプログラミング教育への支援」についてアンケートをしたところ、「前向き」と答えたが約4割で、「中立(59%)・後ろ向き(6.8%)」と答えた数が半数以上もありました。
前向きと答えた先生と、中立・後ろ向きと答えた先生で以下のようなコメントがありました。
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学校 |
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教育への支援について、いろんな声が出ているように、自治体や学校によってプログラミング教育への取り組みや支援に大きな差があるのがわかります。この格差をなくすためには、教員向けの研修を増やすことや地域コミュニティや政府の連携や支援が重要です。
以上が、日本のプログラミング教育の現状と課題・問題点の解説でした。
文部科学省では、プログラミング教育を広める活動や、先生たちがプログラミング教育への不安を無くして安心して指導できるようなサポートや取り組みを行っています。
【先生向けのサポート・取り組み】
・企業と連携した学習案の公開(みらプロ2020)
・小学校を中心としたプログラミング教育ポータル(旧未来の学びコンソーシアム)で事例公開
・先生向けに研修教材を公開、オンライン研修の実施
・先進的な取り組みを行う学校を「研究開発学校」として指定し実践事例を全国に広める
・教材の開発(小学校プログラミング教育に関する研修教材)
【プログラミング教育を普及する活動】
・プログラミングコンテストの後援
∟中高生向けアプリコンテスト「Technovation Girls」
∟U-22プログラミング・コンテスト実行委員会
∟全国高等専門学校プログラミングコンテスト
∟プログラミングスタジアム
・子供向けワークショップの後援
∟STEAM出前授業
このように文部科学省では、さまざまな形でプログラミング教育を広める活動を行っています。
日本のプログラミング教育はスタートして4年ほどですが、今後はどうなっていくのでしょうか?
プログラミング教育の「未来」について、いくつかの観点から考察をしてみました。
プログラミング教育は、今後もますます浸透していくと予測されます。
GMOメディアと船井総合研究所が発表した「2024年 プログラミング教育市場規模調査」によると、2018年から6年間連続で増えているということがわかりました。
・出典:GMOメディア株式会社「2024年 プログラミング教育市場規模調査」
2025年から始まる大学共通テストで「情報I」が追加されることも関係しているのかと考えられますが、大手予備校にはたくさんの受験生や保護者からの申し込みが来ているとのことです。塾や予備校でのプログラミング教育の導入はどんどん進んでいます。
このことから、プログラミング教育が子供の単なる「習い事」から「必修教育」へと変わってきているのが伺えます。また、デジタルやAI技術がさらに進化するとともに、学校の授業内容や教材の充実も進み、教育の「質」も上がっていくでしょう。
現在、プログラミング授業の内容やカリキュラムについてまだ明確に標準化されてませんが、今後プログラミング教育がさらに広がることで、教育指導例が増え、効果的な授業内容やカリキュラムが作られると予想されます。
また生成AIのように新たな技術が登場すれば、それにあわせて教材内容もどんどん更新されていくでしょう。さらに今問題を抱えている教師側の知識不足が改善されたり、授業の準備負担が減るなど教育現場の環境を改善するきっかけにもつながると考察しています。
社会全体がデジタル化・IT化が進む中で、プログラミング教育の重要性はさらに高まっています。
実際に、プログラミングスキルを持った人材採用も増えているので、学校教育でもそのニーズに応じた授業が求められています。将来、社会に適応できる人材を育てるためにも、プログラミング教育はますます重要になってくるでしょう。
他国と同じく、日本もプログラミング教育は世界で通用する人材を育成するための施策として、導入がされています。
子供たちには、日本だけでなく世界で通用できるスキルを身につけてもらうために、今後も国際的な基準や学習方法を参考にした教育が導入されていくと考えられます。
オンライン学習サイトやAIを使った学習など、教育技術がさらに進めば、もっと効果的で魅力的なプログラミング学習ツールも登場してくるでしょう。
最新技術を取り入れた教育方法が普及すれば、お子さんのスキルアップに役立つだけでなく、先生が授業を準備する負担を減らすことにつながります。
以上が、プログラミング教育の今後のについての考察でした。
ここからは、本題の小学校のプログラミング教育の目的や狙いについて、文部科学省が発表している資料を使って解説していきます。
小学校のプログラミング教育のねらいを説明する前に、プログラミング教育と関係のある「情報活用能力※の育成」についても解説します。「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つのポイントが挙げられており、その中の「情報の科学的な理解」がプログラミング教育にあたります。
小学校では、単に「プログラミング的思考」を育めばOKということではなく、情報を収集・整理・比較・発信・伝達する力や、情報モラルや情報手段の基本的な操作スキルを含めたトータルな情報活用能力を学んでいく中で、プログラミング的思考を養う機会を取り入れるということを覚えておいてください。
これを踏まえた上で、本題の小学校のプログラミング教育のねらいですが、以下の3つになります。
【小学校のプログラミング教育3つのねらい】
① 「プログラミング的思考」を育成すること。
② プログラムや情報技術の社会における役割について気付き、それらを上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度を育むこと。
③ 各教科等の中で実施する場合については、「教科等での学びをより確実なものにする」こと。
まとめると、小学校のプログラミング教育のねらいとは、子供たちに論理的思考力と問題解決能力を身につけること、プログラミングや情報技術が社会でどのように役立っているのかを理解させ、技術をいかして社会に貢献する態度を育てるだけでなく、プログラミング教育を取り入れることで各教科の学びをさらに深めていくことを狙いとしています。
ここで、プログラミング教育に関わりのある文部科学省の資料、「小学校のプログラミング教育の手引き」についても解説しておきます。
小学校のプログラミング教育の手引きとは、小学校のプログラミング教育で不安を抱えている先生が安心して指導に取り組めるようにするために、教育の方針や具体的な指導例を取りまとめた資料です。
プログラミング教育は算数や理科といった通常教科をいれた以下6つの学習活動で取り入れるように書かれています。
A:学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの(例:算数・理科)
B:学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの
(例:国語・社会・家庭科・総合など)
C:教育課程内で各教科等とは別に実施するもの(例:プログラミングの特別受業)
D:クラブ活動など、特定の児童を対象として教育課程内で実施するもの(例:クラブ活動や選択授業)
E:学校を会場とするが教育課程外のもの(例:放課後プログラミング教室・週末ワークショップ)
F:学校外でのプログラミングの学習機会(例:プログラミングキャンプ・地域のプログラミング教室)
1点、手引きでは、「プログラミング教育は児童の負担にならない範囲で実施するもの」とされているので、上記の6つの活動全てでプログラミング教育を実施しなければいけないわけではありません。各学校でお子さんの興味や関心、学習の進み具合なども考えた上で、工夫しながらプログラミング教育が取り入れています。
「プログラミング」と聞くと、ITエンジニアやプログラマーなど限られた職種の人だけが必要な知識・技術と思われるかもしれませんが、そうではありません。
「1−2.プログラミング教育がはじまった背景」で紹介したように、これからの社会において、ITとの関わりはますます増え、大半の仕事がAIによって自動化されるとも言われています。これから生きていく上で、AIやテクノロジーをどう活用していけるかが鍵となり、コンピュータを理解して上手に活用する力は、将来どのような職業に就くとしても、重要なことだと考えられています。
そのためには、コンピューターの仕組みをきちんと把握して、論理的かつ多角的に物事を見て問題を解決する力、いわゆる「プログラミング的思考力」が必要です。
プログラミング教育では、お子さんにとってコンピュータの仕組みの理解から、AIやデジタルを活用する上で必要なプログラミング的思考力を身につけるきっかけとなります。実際に日本の小中高校でプログラミング教育が必修化されたのは、プログラミングが単なる技術の習得ではなく、これからの時代を生き抜くための基礎的な力を養うために必要不可欠だとされたからです。
プログラミング教育を実践することで、お子さんにどんな効果やメリットがあるのか、そして考えられる懸念点(デメリット)についても解説していきます。
プログラミング教育を受けることの効果やメリットをまとめました。
論理的思考力が身につくことで学習成績にもいい影響を与える
早い頃から複雑な問題に挑戦することで失敗を恐れずに挑戦するマインドが身につく
他の人とアイディアを尊重し合いながら新しいものを共同作業する経験を早くからできる
現代社会で必要なさまざまなスキルを身につけて、将来の職業の選択肢の可能性を増やすために大切な基盤をつくれることが何よりのメリットです。
反対に、プログラミング教育をする上で以下のようなデメリットや懸念点もあります。
プログラミング教育を受けることのメリットはたくさんありますが、学校側は他教科とバランスの取れた学習カリキュラムを考えることや、教育者向けの研修や学びの機会を作る必要もあります。またすべての生徒が興味を持って学べる環境作りも不可欠です。
一部の人から「プログラミング教育ってやっても無駄なのでは?」「意味がない」という声もありますが、それは誤解です。
プログラミング教育を通じて身につけたスキルというは、プログラミング関連の仕事だけでなく、他の仕事でも十分に活せるスキルだからです。例えば、論理的思考力や問題解決能力、創造力といったスキルは将来のどの職種で必要になります。またデジタルリテラシーがあると、普段の日常生活にも役に立ちます。
このように、プログラミング教育にはたくさんのメリットがあり、一切無駄ではありません。未来に必要とされるスキルを早いうちから身につけておくことは、将来のお子さんの成功につながる大切な投資であるということを覚えておいてください。
先ほどプログラミング教育の効果について、「論理的思考力」や「問題解決能力」、「創造力」が身につくと話しましたが、実際にプログラミング教育では以下のようなスキルが身につきます。
では、次の段落でこれらのスキルについて詳しく紹介していきます。
まず1つ目に、プログラミング的思考です。
プログラミング的思考とは、プログラム作成や設計で使う考え方を応用した思考のことで、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」と定義されています。
具体的には、物事をこまかくわけて考える(分解)力、物事の似ている部分や関係性を見つけてひとくくりにして考えやすくする(一般化)力、さまざまな方法を組み合わせる(組み合わせ)力、本質をみつけて大事なことだけにしぼって考える(抽象化)力、頭の中で手順を予測する力(シミュレーション)の5つあります。
プログラミング的思考はプログラマーやIT現場で働く人だけではなく、どの職種でも活かせるため、デジタル社会で生きていく上で必要不可欠なスキルでもあります。
下記の記事では、初心者向けに、プログラミング的思考の5つのスキルをはじめ、まちがいやすい論理的思考とのちがいの解説や日常生活で実践できるプログラミング的思考の身につけ方についてわかりやすく紹介しています。
2つ目に、想像力や創造性です。
プログラミング教育では、パソコンやタブレットなどICT機器や学習ツールを使ったお絵描きやプログラムづくりなど、子どもたちの想像力を刺激するような学習があります。
小学校でプログラミング言語を書くことはないですが、プログラミング言語をブロック化したツール(Scratchなど)を使右ことが多く、簡単なアプリケーションやゲームを作る体験ができます。課題をクリアするためにさまざまな解決策を考えることで、お子さんの想像力を育むことができます。
3つ目に、コミュニケーション能力です。
プログラミング教育では、個人で取り組むこともあれば、グループで意見や案を出し合って協力しながら問題を解決するといった授業スタイル(グループワーク)もあります。
グループワークは、多くの学校でも採用されており、チームワークやメンバーとの協力が必要になるため、意見交換を通して、自分の考えを他の人に伝える力や相手の意見を理解する力(ディスカッション力)が生まれ、コミュニケーション能力を身につけることができます。また、最後にグループの成果をまとめて発表する機会も多いので、プレゼンテーションスキルやリーダーシップや調整力なども自然と身につくことが期待されています。
4つ目に、プログラミング教育を通じて情報モラルや情報リテラシーが習得できます。
デジタル社会で生きていく上で、個人情報などの情報の取り扱いや、情報に惑わされずに正しい情報かどうかを見極める力が求められます。プログラミング教育では、こういったスキルや判断力を養う機会もあります。
また、SNSやチャットを使う時のネチケット(ネットマナー)、情報モラルやセキュリティについても授業で学びます。
5つ目に、プログラミング教育では、パソコンやタブレットといったICT機器の基本的な使い方を学ぶ機会があります。
最近はコンピュータやタブレット、スマホなどのICT機器を使うことが当たり前になっています。子供の頃からこれらの機器を正しく効果的に使う方法や操作方法も学ぶ必要があります。具体的には、電源の付け方やインターネットで検索する方法、機器でトラブルがあった時の対処法、ウィルスやセキュリティソフトについての学習などICT機器を正しく操作するための方法や知識を学びます。
このようにプログラミング教育では、単なるプログラミングの知識学習だけではなく、問題解決能力やコミュニケーション能力といったスキルから情報モラル・ネチケットなど幅広いスキルを育むことができます。
以上が、プログラミング教育で身につくスキル5つの紹介でした。
ここからは、実際にプログラミング教育で使われているICT機器や環境について紹介していきます。
パソコンやコンピュータなどは、プログラミング教育でよく使われている端末です。
筆者の独自調査にはなりますが、小学校で採用されているパソコン・コンピューターのメーカーで多いのが「Chromebook」です。
ICT教育の一環として、全校で生徒1人1台タブレットが支給されていますが、プログラミング教育の学習ツールとしても活用されています。
タブレットの具体的な使用例としては、デジタル教科書や資料を見る、Scratchや専用の学習アプリを使った授業、課題の提出などで使われているようです。学校でよく採用されているタブレット端末メーカーは「iPad」や「Chromebook」があります。
小学校のプログラミング教育では、通常教科の中に取り入れられているケースが一般的です。
そこで、実際に各教科や既存授業以外の授業やその他の学校活動でどのように取り入れられているのか、またよく授業で使われているツールについても紹介していきます。
まずは、「小学校のプログラミング教育の手引き」の6分類の中でA分類とB分類※にあたる、一般的な授業で行われているプログラミング学習事例を紹介していきます。
※A分類やB分類についての説明は「2−2.「小学校のプログラミング教育の手引き」とは?」を確認ください。
「算数」はプログラミング教育を取り入れている事例の多い教科の1つです。
スクラッチなどのビジュアルプログラミング言語を使って、多角形を描く学習や公倍数の学習をするなど、算数の授業内に自然に組み込まれていることが多いです。
▶︎参考:算数での実践例(岩手県盛岡市立向中野小学校)
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拡大図と縮小の学習(小学6年生) |
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個人で実践 |
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長方形を2倍に拡大、半分に縮小した図をパソコンのプログラミング言語(Hour of Code)をつかって書いていく。 |
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・パソコン(1人1台) ・ツール:プログル、Hour of Code(ビジュアルプログラミング言語) |
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・意図した拡大図を作るために試行錯誤しながらベストな作成手順を考えることができた。 ・拡大や縮小するためには辺の長さや角度など長方形の特徴を理解しておく必要があることを知らせて必要な長さを入力して実践させることで、算数の学習もしっかりと入れた学習になった。 |
・参考:文部科学省「岩手県盛岡市立向中野小学校/大船渡市立盛小学校(拡大図と縮図)」(pdf)
Hour of Code(この事例ではありませんがscratchも)などのビジュアルプログラミングツールを使って多角形の定義や角度、辺の長さの特徴など、算数の概念を学べるような内容になっています。
「理科」では、プログラミング言語やツールを使った学習はもちろんツールなどを使わない学習スタイル(アンプラグド型の授業)もあります。なお、文部科学省の「小学校学習指導要領」では、理科の授業で小学3年生〜6年生で学ぶべき思考力について以下のようにまとめられていたので紹介します。
▶参考:小学校の理科で身につく思考力について
・出典:文部科学省「【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説」(pdf)
文部科学省の指導要領を参考に、理科×プログラミグ教育ではどんなスキルが身につくのかをまとめてみました。
【3年生】
比較しながら調べる活動を通して自然の事物・現象について追究する中で差異点や共通点を基に問題を見いだし表現する。
=パターン認識、大きな問題を小さな部分に分けて考える力
【4年生】
関係付けて調べる活動を通して自然の事物・現象について追究する中で既習の内容や生活経験を基に根拠のある予想や仮説を発想し表現する。
=アルゴリズムの設計、論理的思考力を養う
【5年生】
条件を制御しながら調べる活動を通して自然の事物・現象について追究する中で予想や仮説を基に解決の方法を発想し表現する。
=条件分岐、デバッグする力
【6年生】
多面的に調べる活動を通して自然の事物・現象について追究する中でより妥当な考えをつくりだし表現する。
=抽象化・評価と改善
今回は、「アンプラグド型(パソコンやタブレットなどを使わない)の学習事例」があったので紹介します。
▶参考:理科での実践例(栃木県)
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1秒時計をつくる(小学5年生) |
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個人 + グループ |
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おもりの重さや振り子の長さなどの条件を制御しながら、振り子の運動の規則性を調べる授業で、振り子が1往復する時間は、振り子の長さによって変わることについての理解と、観察、実験などに関する技能を身につけることと、予想や仮説をもとに、解決方法を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。 【授業の流れ】 (1) 本時の学習問題を確認する (2)予想し、実験計画を立てる (条件について自分の考えをもつ、 自分の考えをもとにグループで話し合い、計画を立てる) (3)実験を行い、条件を再検討する。 (4)まとめをする。 (5)振り返る。 |
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・なし(アンプラグド型の教育) |
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・自分の考えの根拠を示しながら実験計画について話し合う様子があった。 ・実験結果から何度も条件を考え繰り返し実験を行うなど、試行錯誤するシーンがあった |
・参考:令和3年3月25日現職教育資料(栃木県教育委員会事務局義務教育課編集)事例④ 理科 第5学年 「1秒時計をつくろう」(pdf)
総合的な学習(探究)は、プログラミング教育が取り入れられていることが一番多い教科です。
文部科学省では「プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合、プログラミングを体験することが、探究的な学習の過程に適切に位置付くようにすること」とされており、以下の3つの授業スタイルがあります。
①問題解決型
身近な問題をプログラミングで解決する方法を学ぶ授業スタイル
(例)学校のゴミ分別問題を改善するために分別を促すための解決策をプログラミングで提案しよう!
②情報発信型
魅力やよさを発信し伝えるためにプログラミング体験を通して学びながら発信する授業スタイル
(例)地域の魅力について他の人と考えをシェアし、プログラミングを活用してみんなに発信する
③プロジェクト型
チームで協力してプロジェクトを進め、プログラミングスキルを実践的に学ぶ授業スタイル
(例)ロボット教材や基板を使った学習
※内容によってはこれらを全てを組み合わせた授業スタイルもあります。
実際に総合の授業で行われたプログラミング教育事例を紹介します。
▶︎参考:総合での実践例(長門市立日置小学校)
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日置スイカを育てよう(小学3年生) |
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不明 |
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地元の特産品である「日置スイカ」を教材として取り上げ、地域の特産品や農家の方の工夫や苦労について、興味関心をもって実際に栽培や日置スイカに関わる人々にインタビューを行い、そこで感じた課題の解決法を考えるなかで、mBot を活用したプログラミング学習を取り入れていく。
(1)特産品の「日置スイカ」について知ろう (2)スイカづくりの課題について考え、自動で草刈りや収穫をするロボットをつくる (3)日置スイカの魅力を伝えよう |
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・端末:Chromebook(1人1台) ・ツール:mBot |
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日置地域で行われている「日置スイカ」づくりについて調べる活動を通して、地域に対する思いを深めるとともに、課題を見つけて解決の方法を考える中で、将来にわたって地域に貢献しようとする意欲をもつことができる。また試行錯誤を繰り返して自分が意図する一連の活動を実現させることで、プログラミング的思考を育むとともに、身近な問題を解決し、 よりよい生活を築こうとする態度を養うことができる。 |
・参考:長門市立日置小学校 第3学年 総合的な学習の時間 学習指導案(pdf)
国語の授業でプログラミング教育を取り入れることで、論理的思考力や創造力を育てることができます。
よくある例としては、物語を読んでその物語をプログラミングを使って表現する学習や、漢字やことわざを学習する授業などでプログラミングが活用されています。
▶︎参考:国語での実践例(町田市立小山中央小学校)
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お話の作者になろう(小学2年生) |
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個人 |
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まず「はじめ」と「おわり」の2つの場面を掲示して子どもたちは「なか」の場面を考え、「ソビーゴの日曜日」を使ってオリジナルのストーリーを作る。 |
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・端末:パソコン(Chromebook) ・ツール:ソビーゴの日曜日 |
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物事を順序立てて考える力や自分が思い描くお話になるような動きをつくることで、自分の思いを表現する力を養う。 |
・参考:株式会社ワイズインテグレーション 町田市立小山中央小学校でソビーゴアプリを使った授業を実施
新学習指導要領によると、家庭科では「家族・家庭生活」「衣食住の生活」「消費生活・環境」の3ジャンルの授業で習得すべき知識や、育成すべき思考力、判断力、表現力をプログラミング体験を通して身につけることが必要と書かれています。
今回は、「衣食住の生活」に関係する家庭科×プログラミング教育の実践例を紹介します。
▶︎参考:家庭科での実践例
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食べて元気!ご飯とみそ汁 |
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個人 + グループ |
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食事の役割や日常の食事の大切さと食事の仕方、米飯やみそ汁の調理計画や調理の仕方について理解し、炊飯のプログラム(=炊飯器に組み込まれているプログラム)を考える活動を通して、炊飯の一連の手順について理解し調理手順を考え、身近な生活でコンピュータが活用されていることにも気付くことができるようにする。
(1)炊飯のプログラム を考えるなかで、おいしいご飯を炊く手順を考える (2)炊飯のプログラムを考え炊飯の一連の手順を話し合う (3)大型モニターに提示して全体で話し合う (4)プログラミングソフト「炊飯器シュミレータ」を使って、炊飯の手順を分解し、並べ替えを行う (5)一人で考えた後友達と一緒に考える時間を設けて試行錯誤しながらベストな量や調理手順を考える。 |
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・端末:タブレット ・ツール:炊飯器シュミレータ |
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プログラミング的思考で必要とされている、問題を分解する力、アルゴリズム設計、デバッグ(トライアンドエラーをする)、条件分岐の基本(炊飯時の水の量や炊飯時間で出来具合がかわること)、メンバーとのコミュニケーション能力を育みました。 |
社会では、「社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を学ぶ」とされています。
今回は、日本の都道府県を勉強する授業の中でプログラミング体験を取り入れた事例を紹介します。
▶︎参考:社会での実践例(東京学芸大学附属小金井小学校)
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ブロックを組み合わせて47都道府県を見つけよう(小学4年生) |
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個人(3時間) |
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コンピュータのプログラムを活用して都道府県の地理的環境や自然条件、面積、人口や特産物などの特色を3つ以上組み合わせて都道府県を1つ特定する授業を通して、47都道府県の名称と位置の理解と「必要な条件を考える」「条件を組み合わせる」「必要に応じて改善する」といったプログラミング的思考を養う。
(1)47 都道府県の見付け方を知る (2)タブレット(Scratch)を使って都道府県の見付け方を知る (3)タブレット(Scratch)を使って都道府県の見付け方を知る (4)活動を振り返り、ふりかえりカードにまとめ発表し合う |
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・端末:パソコン ・ツール:Scratch |
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地図帳から都道府県の特徴を探し、試行錯誤しながら特徴を組合せて(条件設定)都道府県を1つ特定する。何度も繰り返し取り組むことができたり、足りない条件(特徴)を地図帳から探したりすることで、単に地図上で理解することよりも思考を伴った学習活動になる。 |
・出典:文部科学省「東京学芸大学附属小金井小学校 ブロックを組み合わせて47都道府県を見つけよう」(pdf)
音楽はプログラミング教育とも相性がよく、お子さんも楽しみながら学習できる教科です。
▶︎参考:音楽での実践例(戸田市立戸田東小学校)
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動物が楽しくおどるリズムループをつくろう(小学3年生) |
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4人1グループ(3時間) |
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まとまりのあるリズムの仕組みをいかして「LOOPIMAL(ルーピマル)」でリズムをつくり、思いや意図を伝え合いながら面白さを味わう。
(1)手びょうしでつくったリズムの仕組みを生かしてリズムループをつくり、おもしろさをあじわう (2)工夫を生かし、ルーピマルの構成を考える (3)ルーピマルで配置を試しながらリズムループづくりの発想を得て、思いや意図を明確にしていく (4)他の班のリズムループを聴き、友達から工夫点を聞いてそのよさや面白さを味わう。 (5)班ごとに、もう一つリズムループをつくる (6)まとめ・ふりかえり |
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・端末:タブレット ・ツール:LOOPIMAL (ルーピマル) |
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リズムループのパターンを容易に試行錯誤ができるため、試しながらリズムループの面白さに気づかせることができた。 |
・参考:文部科学省「埼玉県戸田市立戸田東小学校(動物が楽しくおどるリズムループをつくろう)」(pdf)
以上が、A・B分類のプログラミング学習を取り入れた学習事例の紹介でした。
ここまでは、「小学校のプログラミング教育の手引き」内のA分類とB分類の実践例を解説してきましたが、既存の授業以外(C〜F分類の学習活動)でもプログラミング学習を取り入れている事例があったので紹介します。
C分類は、「教育課程内で各教科等とは別に実施するもの」とされており、具体的には、授業とは別でプログラミングを学ぶための特別受業を実施することされています。
▶︎参考:C分類の実践例
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たまごが割れたら・・・(2時間20分) |
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府中市立府中第三小学校 3年生 |
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個人授業 |
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Viscuitを使って、たまごを描き、たまごをタッチすると割れるという仕組みをプログラムしていく。さらに割れたたまごから何がでてくるのか、こうした動きをさせたいなど児童のアイデアを出してオリジナルのプログラムをつくっていく。 |
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・端末:タブレット ・ツール:Viscuit(ビジュアル型プログラミング) |
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単調な動きを組み合わせることでできる幅が広がると言う仕組みを理解する、アイディアを創造する力や実現するためにどうしたらいいのか考える力といったプログラミング的思考を身につけると共に、コンピュータがプログラムで動くことに気付かせる授業になった。 |
・参考:小学校を中心としたプログラミング教育ポータル「たまごが割れたら・・・」より
今回は、プログラムの仕組みをわかりやすく理解できるようにするために、Viscuitを使った事例でした。こういった子供向けのプログラミング学習ツールは他にもさまざまあります。
D分類は、「クラブ活動など、特定の児童を対象として、教育課程内で実施するもの」とされています。クラブ活動は、生徒の興味や関心にあわせて、放課後や特定の時間に行われる自主的な活動です。クラブの例としては「コンピュータ(パソコン)クラブ」や「プログラミングクラブ」などがあります。
▶︎参考:D分類の教育実践例
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パソコンクラブでのプログラミング体験(16時間) |
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江戸川区立東小松川小学校の4〜6年生 |
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グループ授業 |
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4年生から6年生まで違う学年の児童と協力しながらコンピュータを用いた活動やプログラミング体験を行い、活動の成果を発表する。またクラブの活動内容の紹介動画の作成や、クラブの見学会や発表会に向けた体験ゲームの作成や、小学生が参加できるプログラミング・コンテストなどに挑戦。(希望者のみ) |
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・端末:パソコン1人1台利用(embotのみタブレットを使用) ・ロボット:BBC micro:bit(マイクロビット)、embot(エムボット) ・ツール:Scratch、Viscuit (ビジュアル型プログラミング) |
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異学年の児童と協力してお互いの意見を尊重しながら創意工夫をしてプログラム作成を進めることができた。プログラミングやスクラッチが去年よりもできるようになった。 |
・参考:小学校を中心としたプログラミング教育ポータル「パソコンクラブでのプログラミング体験」より
クラブ活動では、通常の授業よりも一歩先の学習ができるだけでなく、学年の違う人とチームを組んで協力しながら活動を行うので、コミュニケーション能力も高くなります。自分の作ったプログラムやプロジェクトの成果を発表する機会もあるので、人前で話すことや自分の意見をわかりやすく伝えるスキルも身につけれます。
E分類は、授業ではないが、学校を会場として行われる授業や学習のことで、例としては、放課後プログラミング教室・特別講座・週末ワークショップなどがあります。
▶︎参考:E分類の教育実践例
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「プログラミング×防災」をテーマに復旧ロボットを作る |
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西伊豆町立賀茂小学校(2時間×5日)の(小6:11名、小5:10名の21名) |
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株式会社Z会 |
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グループ授業(3人1組) |
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レゴ社の教育用ロボット「マインドストーム(R)EV3」を使って身近な「防災」をテーマについて考えるプログラミング講座。マインドストームの組み立てやプログラムを行っていく。講座中に児童をサポートするメンターも手伝いながら過去の災害から今後どんな災害が起こるのかを考えて田植えで復旧ロボットを作成し発表をする。 |
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・端末:タブレット ・ロボット:LEGO MINDSTORMS EV3 ・ツールや教材:Z会作成テキスト |
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「防災ロボ」の作成場面では、児童の柔軟な発想力が発揮された。多くのメンターを感心させたロボットを作成したのは、マインドストーム(R) EV3の使用経験を持つ児童ではなく、今回の講座で初めて触れた児童らのグループだった。 |
最後に、F分類は、学校の外でプログラミング学習をする機会のことで、例としては、プログラミングキャンプやイベント・コンテストに参加するといった例があります。
このように、プログラミング教育を他の教科やさまざまな学習機会の中に取り入れることは、お子さんの学びの幅が一層広がり、より実践的なスキルを身につけることにつながります。
番外編として、最近流行りの生成AI※(ChatGPT・画像認識AIなど)を取り入れた学習事例を紹介します。
人工知能技術の1つで、大量のデータ(テキスト・画像・音声など)を学習してそのデータのパターンや特徴を理解して新しいコンテンツを作成するシステムのことです。クリエイティブな分野からビジネスなど実務的なシーンまで幅広く使われており、今後も進化が期待される技術です。
今回、生成AIを使った授業例を2つ紹介します。
印西市立原山小学校とNPO法人みんなのコードが連携して、生成AIの特性を知って、どのようにAIを活用していけばよいかを学ぶ授業がありました。
(1)Google の Teachable Machine ※を使用して、画像認識AIを体験。
→学習データによって結果が違うことを学ぶ
(2)画像認識AIで解決できそうな身の回りにある問題を探し、解決方法をグループで話し合う
(3)Teachable Machine と Scratch を使って実際に問題を解決するためのプログラムを作成
(4)作ったプログラミングをメンバーに共有
(5)生成AIを使った結果につて共有してどのように付き合っていけばいいかを考える
※Googleが提供している機械学習ツールでカメラやマイクを使って画像や音声の認識をする
さまざまな画像をAIに学習させ、正しく認識できるかどうかを試した後、AI と Scratch を組み合わせて実際に動作をさせる授業を行い、プログラミングの基本概念(入力・処理・出力)やAIモデルの訓練と応用を学習していました。さらに、対話型のAI(ChatGPT)を使用した授業も行うなど、AIの仕組みや特性を理解して、AIの回答をそのまま受け入れるのではなく、確認や批判的に考えることの大切さも学んでいました。
東京学芸大学附属小金井小学校の小学校4年生では、「国語」「図工」「道徳」の授業を通して、生成AIの特徴とAIをどのように扱うといいのかを触りながら学習する授業が行われました。
(1)図工「AIによる絵画の鑑賞」
・動画を使ってAIは絵を見分けるのが得意ということを知ってもらう
・Bing image creatorを使ってAIに絵を描かせる
(2)国語「AIと詩を作ろう」
・AIに文章を書かせて、AIは人と見分けがつかないような文章を書けることを知ってもらう
(ただしいつも正しいとは限らない)
・AIが出してきた文字は「正しいかな?」と考えることが大切であることを知ってもらう
(3)道徳「AIと考える『絵葉書と切手』」
・教材「絵葉書と切手」を読んで最後の結末を知らせずに児童にどんなラストになるのか考えさせる
・AIの意見はどうなるのか確認する
・AIの回答から本当にそうなのか再度質問をする
・AIっていつでも正いいわけではないことを知ってもらう
▶ 参考:
このように、最新のAI技術を使って正しい扱い方や考え方を学ばせるだけでなく、生成AIは授業をサポートしてくれるツールとしても活用されています。
ここからは、実際に授業でどんなツールやアイテムが使われているのかについても紹介します。
プログラミング教育を行う時によく使われているアイテム・ツールとして「Scratch」「micro:bit」「Code.org」といった海外製のツールが多くあります。
「Scratch」はビジュアルプログラミング環境として多くの学校で利用されているツールで、指示ブロックを組み合わせて簡単にプログラム作成や実行できるように設計されています。また、マイクロコンピュータ「micro:bit」も人気のツールで、ハードウェアとソフトウェアの両方を学ぶことができます。さらに、オンラインプログラミング環境「Code.org」なども多くの学校で導入されているツールです。
どれも日本語に対応しているので、お子さんも安心して利用できます。これらのツールの詳細は「11. おすすめ無料のプログラミング教育学習ツール」で紹介しているので参考にしてみてください。
ここからは、小学校・中学校・高校・特別支援学校やフリースクールなど学校別にどんな授業が行われているのか授業例を具体的に紹介していきます。また参考情報として大学や未就学児(幼稚園・保育園)でもプログラミング教育を行っている事例があったので参考にしてみてください。
小学校のプログラミング教育では、コンピュータはプログラムで動いていることに気づかせて、コンピュータの基本的な使い方やプログラミングの概念を各教科で体験させる中でプログラミング的思考を養っていく授業が行われています。(小学校教育ではお子さんがプログラミング言語や技術を学ぶことを目的とはしていません)
まずは小学校での教育事例です。
日常生活とコンピュータの関わりを知ることからはじまり、問題を解決するために必要な情報を整理して筋道を立てて考えてみる授業があります。プログラミングを使わない教材やワークシートなどを使って自分の考えを表現するような学習スタイルが多いのが特徴です。
社会とプログラミングの関わりを理解して、実際にビジュアルプログラミング(Scratch)を使って基本的なプログラミングの概念を学びつつ、子供たちに簡単なプロジェクトを通じて自分で考えさせる内容が多いのが特徴です。またパソコンの基本操作(マウス操作・タイピング)などもスタートします。
高学年になると、子供たちが自分でテーマを選び、プロジェクトを進める授業スタイルが増えます。また外部の企業を招いた授業を行う学校もあります。グループワークでプロジェクトを計画して、Scratchやマイコンボードを使って作品や資料を作ってプレゼンテーションを行うなど一連の学習を通してコミュニケーション能力や問題解決力を育成します。
中学校では、小学校で学んだ基礎をさらに発展させる目的で、主に「技術・家庭科※」の授業でプログラムの計測・制御の学習やネットワークを利用したプログラミング学習が行われています。
「お掃除ロボット」や「POSレジ」など身近なものがプログラミングで動いていることを学ぶことスタートし、プログラミングの基礎や簡単なプログラムを作成してロボットを制御するといった授業に入ります。最初はスクラッチなどのビジュアルプログラミング言語を使った学習ですが、学校によっては「Python」や「JavaScript」など本格的なプログラミング言語を使ってセンサデータの収集や分析をしたり、簡単なアプリケーション開発など高度な授業を行っている中学校もあります。このように中学校では小学校よりも高度なプログラミング学習が行われています。
技術では「A:材料加工」「B:エネルギー変換」「C:生物育成」「D:情報の技術」の4つの学習分野がありプログラミングに関する内容はDの情報の技術で行われています。
高校では、これまで選択科目としてプログラミング(情報Ⅰ)を選んだ人だけが学べていたのですが、2022年からはその「情報Ⅰ」が必修科目となりました。さらに2025年度の大学入試から「情報Ⅰ」が追加され、大学入学共通テストや一部の大学入試試験でも出題されます。
実際に学校で使われている教科書の一部が公開されているので紹介します。
・出典:開隆堂のデジタル教科書 令和4年度版高等学校 高等学校情報
画像のように、プログラミング技術やデータの扱い方、アルゴリズムの設計についてから、通信技術の知識(Webサイトの仕組みや安全なサイト見分け方)なども学びます。また、学校によっては「Python」「Java」や「C++」などのプログラミング言語を使った実践的な授業も行われるなどそのため、より専門性の高い内容になっています。
また、高校では個人学習ではなくグループ学習が重視されており、チームでアプリケーションの設計、実装、テストの一連の流れを通して、実践力やチームワークを養います。
特別支援学校では、視覚や聴覚に障害がある生徒には、特別な支援機器やツール・ソフトウェアが用意されています。
東京都立石神井特別支援学校の「美術」の授業でプログラミング教育を絡めた授業を実施しました。
▶︎参考:教育実践例
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プロジェクションで表現しよう |
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東京都立石神井特別支援学校(中学部2年生 30人) |
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美術 |
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スクラッチとプロジェクション技術を組み合わせたプログラミング学習。
1日目:プロジェクションについて知る 2日目:タブレットとVISUAMUSIOを使って図形や音楽をつくる 3日目:友だちが作った音楽に合わせて身体表現を行う 4日目:お互いの身体表現映像を鑑賞する |
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・機器:タブレット、プロジェクター、スピーカー ・ツール:Kinect2Scratch(キネクト・トゥ・スクラッチ)、VISUAMUSIO |
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子どもたち自身で本格的にプログラミングに取り組む実践ではないが、子どもたちのよりクリエイティブな表現を引き出すことが可能となった。 |
・参考:Computer Science for ALL プロジェクションで表現しよう
・参考:Programming for ALL 東京都立石神井特別支援学校
特別支援学校では、Kinect2Scratch※のような視覚的でかつ体を動かして操作できるツールを使うことで、運動と学習を組み合わせて楽しみながらプログラミングを学習する事例がありました。
Kinect2Scratchは、Microsoftが作っているKinect(キネクト)と呼ばれるからだの動きやジェスチャー、音声を認識してコンピューターを操作できるセンサーと、Scratchを連携させるためのソフトウェアです。視覚や運動機能に課題がある生徒でもプログラミングスキルを効果的に学ぶことができます。
フリースクール※でも、お子さんの年齢や学習レベルに合わせたプログラミング教育が行われています。
学習には「Scratch(スクラッチ)」が導入されていることが多く、「Python」や「Java」のような専門的な言語の習得が必要なレベルも挑戦できる学校もあります。また、スクールに登校できない人のために、自宅でオンラインのプログラミング学習を受けられるフリースクールも増えています。
2025年から大学入学共通テストに文系・理系共通の必修科目として「情報」が追加されますが、実際に大学生はどんなプログラミング教育を受けているのでしょうか?
結論から言うと、理系大学や情報・IT系の学科ではプログラミング関連の授業が必修化されているケースが多く、文系大学の場合は一部の学科でプログラミング関連の授業を行っている状況です。
IT・情報系と理系大学ではプログラミング教育は一般的に必修化されているケースが多いです。プログラミングの基礎知識の座学からアルゴリズムの基礎、構文、デバッグ方法、ソフトウェアの設計方法やテストなど学習した上で、本格的にチームを作ってソフトウェアやモバイルアプリの開発をするといった授業があります。使用言語は、Python、C、Javaなどが多いです。
文系大学でも、「政治経済学部」「商学部」といった学部では、市場調査で出たデータの分析や情報処理のためにプログラミングを学びます。また、教育学部でも学生への指導としてプログラミングの基礎を学ぶことがあります。
このように、ITや情報系の学科や、理系学部ではプログラミング教育は必修化されているケースが大半で、文系学部でもプログラミング教育が必修科目として取り入れられることも増えてきています。大学でのプログラミング教育の必修化は進んでいるものの、大学や学部の方針によってバラバラです。
全ての幼稚園や保育園で行っているわけではありませんが、一部では小学校から始まるプログラミング教育に備えて、プログラミング教育を意識した遊びを取り入れているところもあります。
幼稚園や保育園で取り入れられているプログラミング関連の遊びは大きく4種類あります。
これらは、アンプラグドプログラミングタイプ(パソコンやタブレットを使わずにプログラミング的思考を学ぶ学習方法)と言われてます。言語の理解がまだ追いつかない小さいお子さん向けに、遊びの中で学習できる方法を使った知育遊びが取り入れています。
以上が、年代別のプログラミング教育の授業内容や実践例の紹介でした。
ここまでは、一般的な授業内容について紹介してきましたが、ここからは、全国にある自治体ではどんな取り組みがされているのかについても紹介していきます。調べていく中で、プログラミング教育が必修化される前から独自で教育を取り組んできた自治体や、先進的なプログラミング教育を行っている自治体などもありましたので紹介していきます。
佐賀県武雄市は、全国の中でいち早くプログラミング教育を進めてきた自治体で有名です。小中学校全体でプログラミング教育が導入されており、年間を通じたカリキュラムも組まれています。
プログラミング教育に必要なパソコンやタブレットの1人1台の導入は、2010年代半ばにはスタートしており、2014年にはディー・エヌ・エー(IT企業)と東洋大学(学校)と連携して小学校1年生を対象にプログラミング授業を始めるなど、どこよりも先駆けてプログラミング教育を行い、最新技術なども授業に積極的に取り入れています。
東京都渋谷区は、東京都内の中でもプログラミング教育への取り組みを積極的に実施している自治体の1つです。民間企業と連携したプロジェクトがたくさんあります。
・Tech Kids School
「渋谷区 プログラミングコンテスト」の開催
・株式会社スプリックス
2023年7月に『プログラミング能力検定(プロ検)』を区内全校に導入
・GMO・東急・サイバーエージェント・DeNA・MIXI
「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト」を発足
・GMOインターネットグループ
2024年6月から渋谷区立笹塚小学校のロボットプログラミング(クラブ活動)をサポート開始
宮城県もまた、プログラミング関連教育において先進的な取り組みを行っている自治体です。
県内すべての小中学校でプログラミング教育を進めるために、教員向けの研修会を開くだけでなく、先生向けの研修資料集、「プログラミング教育校内研修ナビ(通称『プロナビ』)」の公開や、生徒も使えるプログラミング教育パッケージ「みやプロGo!」を開発するなど、積極的にプログラミング教育を広めるた活動を行なっています。
また県全体の教育の質を高めるために、Youtubeを使った配信(MナビTV情報教育チャンネル)や月間新聞(Mナビ新聞)で各校での先進的な教育の取り組みや事例もたくさん公開されています。
ここで、日経BPが毎年発表している情報教育への取り組みに関するランキングがあったので紹介します。
「全国市区町村公立学校情報化ランキング」とは、文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」を参考に、公立学校の情報化の度合いを独自の評価でランキング化したものです。2024年度版では、コンピューターやインターネット接続回線といったインフラ整備率と教員のICT活用指導力のスコアを評価したランキングです。
▶️2024年度版 全国市区町村公立学校情報化ランキング
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愛南町(愛媛県) |
愛南町(愛媛県) |
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松山市(愛媛県) |
西予市(愛媛県) |
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大分市(大分県) |
松山市(愛媛県) |
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西予市(愛媛県) |
飛騨市(岐阜県) |
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新居浜市(愛媛県) |
土浦市(茨城県) |
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四日市市(三重県) |
常陸大宮市(茨城県) |
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菰野町(三重県) |
稲敷市(茨城県) |
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西条市(愛媛県) |
行方市(茨城県) |
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鬼北町(愛媛県) |
つくばみらい市(茨城県) |
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墨田区(東京都) |
龍ヶ崎市(茨城県) |
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足立区(東京都) |
下妻市(茨城県) |
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土浦市(茨城県) |
笠間市(茨城県) |
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つくばみらい市(茨城県) |
北茨城市(茨城県) |
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桜川市(茨城県) |
四日市市(三重県) |
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蕨市(埼玉県) |
新居浜市(愛媛県) |
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龍ヶ崎市(茨城県) |
西条市(愛媛県) |
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取手市(茨城県) |
徳島市(徳島県) |
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飛騨市(岐阜県) |
阿南市(徳島県) |
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稲敷市(茨城県) |
阿波市(徳島県) |
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笠間市(茨城県) |
大分市(大分県) |
・出典:日経BP「公立学校情報化ランキング――小中高等学校の上位自治体」
2024年度ランキングでは、GIGAスクール構想の一つとして行われていた生徒1人1台、ICT機器を導入する動きが全国的に広まり、スコア差がなくなったこともあって、先生のICT活用指導力の高い自治体が上位に入る結果となりました。
文部科学省でも、さまざまな取り組みを行っていますが、そのほかにも国・自治体と企業が連携した取り組みや会社が独自で行っているプロジェクトや研修などがあります。ここでは、国・地方自治体と企業がコラボした例(官民連携)と企業が独自で取り組んでいる例、プログラミング教育に関する学会や研究例とNPO法人の活動例についてそれぞれ紹介します。
まずは、各自治体と民間企業が協力したプロジェクト例です。
官民連携では、企業から専門スキルをもつエンジニアや講師が学校に訪れて、生徒や教師のトレーニングや授業のサポートをしてくれる事例や、企業が持っている最新技術やツール、教材などの提供といった例もあります。
今回は官民連携の事例を4つ紹介します。
2020年に東京都教育委員会とMicrosoftが連携することを発表し、Microsoftでは以下のような取り組みを行っています。
・都立学校向けに学習支援サービス「Microsoft 365 Education」を提供
・生徒と教員のアカウントを作成してオンライン学習等で利用する学習支援サービスを提供
・ミーティングツール「Microsoft Teams」などの設定サポート
2019年に、渋谷区教育委員会とGMOインターネットグループ株式会社、東急株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)、株式会社MIXI、渋谷区教育委員会の6つが連携して「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト」を作り、渋谷区内の小中学校のプログラミング教育を支援しています。
・渋谷区の全公立小中学校に講師派遣や授業例の提供などの授業をサポート
・教員に向けたプログラミング教育の研修
・プログラミング関連のワークショップやイベントの実施
・渋谷区の全公立小中学校で「シブヤ未来科※」の取り組みがスタートするにあたって、授業で生徒が自ら問題をみつけて、解決する能力を身に付けるための授業をサポート
※「シブヤ未来科」とは、月曜日から金曜日の午後の授業時間を道徳や特別活動の時間にするという渋谷区の独自の授業カリキュラムです。
2022年7月11日に、大阪府教育庁とCA Tech Kids、ゲームで有名なCygamesが連携することを発表し、大阪府の小学生がより一層プログラミングに興味・関心をもってもらうためのワークショップやコンテストを運営しています。
・小学生向けプログラミングワークショップの開催
・小学生向けプログラミングコンテストの運営(OSAKAキッズプログラミングコンテスト)
2023年12月にプログラミング教育サービス事業を行っている「ライフイズテック株式会社」と静岡県裾野市が連携することが発表されました。
・裾野市内の全ての中学生にオンラインプログラミング教材「ライフイズテックレッスン」を導入
・教員向けに「ライフイズテック レッスン」を実施し、研修を通して教員の指導力アップを目指す
・中学生の意識がどのように変化したのか、プログラミング教育の効果について検証する
・生成AIを活用した人材育成
このように、国や地方自治体と民間企業が協力することで、さまざまな学びの場が広がり、充実した教育を受けることができます。
企業が独自でプログラミング教育を広める活動やイベント例もありましたので紹介します。
サイバーエージェントでは、「テクノロジーを武器として、自らのアイデアを実現し、社会の能動的に働きかけることのできる人材の育成」を掲げて、お子さん向けのプログラミング教育に力を入れている会社です。 グループでは、「 Tech Kids School 」と呼ばれるプログラミングスクールの運営や、オンライン学習サービス「QUREO(キュレオ)」の開発、QUREO を使ったプログラミングスクール運営なども行っています。
DeNAでは「次世代のIT育成支援」として、公立小学校でのプログラミング教育の取り組みを行ってるIT会社です。
2014年から小学生を対象としたプログラミング教育(佐賀県武雄市の小学校)をはじめ、2019年に文部科学省が「未来の学び プログラミング教育推進月間(通称:みらプロ)」の協力企業として参加するほかにも、横浜市や渋谷区などの自治体でエンジニアから直接指導する機会や、学校向けのアプリ開発など、IT企業ならではのサポートを行っています。
Life Is Tech!は、「中高生ひとり一人の可能性を一人でも多く、最大限伸ばす」をテーマに、中高生向けにプログラミングスクールを運営しているテクノロジー企業です。
プログラミングスクールだけでなく、春夏冬休み限定の短期プログラム(ITキャンプ)の開催や、地域のICT教育をもっと豊かにするために最新技術を使った学習プログラムの実施なども積極的に行っています。
Googleでは、子どもたちがプログラミングをはじめとするコンピュータ サイエンス教育をわけへだてなく受けるための支援に取り組んでいます。
その1つに、2022年 3月から日本のプログラミング教育を支援するカリキュラムプログラミング教材「CS First」を無料で公開しています。さらに、教員を対象にCS Firstの事例の発表や勉強会などを通して他の先生方と交流がでるオンラインコミュニティも設立されています。(くわしくは、「.(1)Google小学校向けプログラミング教育カリキュラム「CS First」」を参考ください)
このように企業によるプログラミング教育への取り組みや活動が増えることは、お子さんたちのプログラミング教育への興味を持つきっかけにつながります。
日本には、プログラミング教育に関連する学会がいくつかあり、プログラミング教育を良くしていくため重要な役割を果たしています。
日本で有名な学会は以下になります。
子供たちにプログラミングを教えたり、先生向けの研修や教育システムの開発を行うなどプログラミング教育を広めるための活動をするNPO法人もあります。
今回は、4つのNPO法人と活動例を紹介します。
特定非営利活動法人みんなのコード は、小学校プログラミング教育の「家庭間格差」「地域間格差」「学校間格差」といった課題に対してプログラミング教育を普及するために積極的に取り組んでいるNPO法人です。
具体的には、小学校の教員向けにプログラミング教育の研修や教材の提供、お子さんが楽しく学べるプログラミングカリキュラムの開発、プログラミングに興味を持つ教師や保護者・企業・生徒の情報共有や交流の場やイベントの運営など全国各地で活動を行っています。 また、プログラミング教育での小学校の女性教員を増やすために、小学校の女性教師に特化した無料のプログラミング教育養成プログラム「SteP(ステップ)」も運営しています。
NPO法人プログラミング教育研究所 は、2017年から「すべての子供たちにプログラミング教育の機会を」を掲げて、東京都北区を中心に小中学生向けプログラミング教室、プログラミングコンテストを実施しているNPO法人です。
東京都全域で無料プログラミング教室を開催し、2023年度には『子供が輝く東京プログラミングコンテスト』も実施するなど、子供たちが将来必要となるデジタルスキルを習得するためのサポートを行い、プログラミング教育の普及と発展に寄与しています。
放課後NPOアフタースクール は、「子どもたちの放課後を救え!」というミッションを掲げて子供たちが放課後の時間を有意義に過ごせるように、多様な学びの機会を提供する非営利団体です。プログラミング教育もその一環としてあり、子供たちが楽しみながらプログラミングの基礎を学べるワークショップやクラスが開催されています。
NPO法人クリッパー とは、「ICTをみんなへ」「教育の多様化」「指導者のサポート」をミッションに、プログラミング教育に乗り遅れる人が出ないように、地域、企業、行政と協力して活用を行っているNPO法人です。プログラミングスクールやイベントを運営しています。
NPO法人CANVASは、世界中の子どもたちがつながって、新しい表現や、豊かなコミュニケーションを生み出し、新しい世の中を築いていって欲しいという願いから、企業や大学や研究機関と行政と協力してワークショップや体験会、プログラミング大会やプログラミング学習を普及するためのプロジェクトなどお子さんの創造的な学びの場を数多く提供しているNPO法人です。
特定非営利活動法人タイプティー(Type_T)は、「とにかく(Tonikaku)やってみる(Yattemiru)プログラミング教育(Programming Education)ティーチャーズ(Teachers)」の英語表記の頭文字をとった法人名です。「子供も先生もワクワクしながらプログラミング教育取り組める国にする。」をテーマにプログラミング教育に関する調査研究や授業の実践、教員向けの研修会や勉強会、意見交換の場を作っているほか、企業や他の団体が行っているプログラミング教育と連携して普及活動を行っています。
以上がプログラミング教育を普及するためのプロジェクトや取り組みの紹介でした。
家庭学習でもプログラミング教育を取り入れていくべき?と考えているご家庭もあるかと思います。おうち学習の中で積極的にプログラミング学習を取り入れていくことのメリットはたくさんあります。
ここでは、その理由と実際に家庭でプログラミング教育を取り入れる際のポイントについて解説していきます。
プログラミング教育がスタートして、
こういったお悩みを持っている保護者の方は、まずは自宅で学習をさせてみるのがおすすめです。家庭学習でプログラミング教育を取り入れることで、こんなメリットがあります。
家庭学習を通して、学校の授業に追いつかないといった悩みも減り、プログラミングに対する自信がつくだけでなく、親子間のコミュニケーションが深まるきっかけにもなります。
実際におうち学習でプログラミング教育を取り入れる際には以下のポイントを意識してみましょう。
・【重要】他の家庭学習や活動とのバランスが難しい場合があるので、お子さんの無理ない範囲で行うこと
・お子さんの年齢や興味関心に合わせた教材を選ぼう
・まずは無料の教材やゲームもたくさんあるので、どんどん活用してみるべし!
・学習の進捗を定期的にチェックして達成感を感じられるようにしましょう
・学習ではトライ&エラーを繰り返すことがポイント。根気よく向き合っていきましょう
・保護者の方自身も、基本的なプログラミング知識を持っておくとお子さんが困ったときもサポートできる
・子供の挑戦は「ほめて」、失敗を恐れずにチャレンジできる環境を作りを意識しよう
ここからは、お子さんに人気のプログラミング学習方法について大きく7つ紹介します。
パソコンやタブレットをつかった学習ツールがたくさんでています。
ツールも無料で利用できるものから、より専門的なプログラミングを学びたい人向けに課金をして利用できるものもあります。気軽にできるところや種類も豊富にあるので、自宅学習に取り入れるご家庭も多いです。
無料学習ツールの紹介は、「11. おすすめ無料のプログラミング教育学習ツール」で紹介していますので参考にしてみてください。
幼児から小学校低学年頃の小さいお子さんには、ロボットタイプのおもちゃや、知育系のおもちゃがおすすめです。
こういったおもちゃは、プログラミング的思考力を使うような遊びや想像力、表現力を自然と引き出してくれる要素が入っています。「学習<遊び」を重視しているので小さいお子さんにはぴったりです。
特におすすめのプログラミング学習トイは以下です。
なお、お子さんの年齢や性格によって、あわないこともあるのでおもちゃ選びはお子さんと一緒にしましょう。
▶︎参考:以下の記事では、プログラミング的思考が身につくおもちゃを年齢別に紹介しています。またプログラミングおもちゃ選びのコツや遊ばせることのメリットまで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
「アンプラグドプログラミング」とは、パソコンやタブレットなどの電子機器を使わずに、遊びの中でプログラミング的思考力が身につく学習方法のことをいいます。
先ほど紹介した知育おもちゃも近いです。大きく4タイプのおもちゃがあります。
コンピュータを動作するための仕組みが学べるものや、問題解決の手順(アルゴリズム)を学べる要素が入っているので、遊びの中で自然と身につけることができます。実際に小学校低学年の授業でこれらのおもちゃを使っている事例もありました。
対象年齢が乳幼児頃から小学中学年頃のお子さんをターゲットにしているおもちゃが多いので、小さい頃からプログラミング教育に触れさせておきたいと考えているご家庭におすすめです。
プログラミング学習をもっと気軽に始めたい、遊びの中で自然と身につけることができる方法がないかと探している人には、ゲームソフトがおすすめです。
今回は、「Nintendo Switch」で遊びながらプログラミング的思考力が身につくゲームソフトを紹介します。
「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」は、「Nintendo Switch」で遊べるプログラミング学習ゲーム。ブロックタイプの学習のため、直感的にプログラミングの仕組みを理解しやすいことと、基礎から応用までをナビゲートしてくれる「ナビつき」機能が搭載されているので、初心者でも安心して学習を進めることができます。子供から大人まで幅広い年齢層が楽しめる内容となってるので親子で一緒に楽しみながら学ぶことができるのも大きな魅力!無料体験版も公開されているのでSwitchがあるご家庭はぜひトライしてみてください。
「マインクラフト」は、ブロックで作られた世界の中で、プレイヤーは自由に建築を建てたり、探検ができたり、モンスターを倒したりすることができるオープンワールド(無限になんでもできる世界)なゲームです。もともとパソコン用ゲームとして開発されたゲームで世界中で人気となり、「Nintendo Switch版」でも販売がされています。
自動で作物を収穫したり、自動扉を作る際に「Redstone回路」と呼ばれるアイテムを使うところも特徴的。お子さんの創造性や問題解決能力、プログラミングの基本概念を遊びの中で学べるゲームです。またオンラインプレイで友達と一緒に協力して遊べるためチームワークの大切さも学べますよ。
「スーパーマリオメーカー2」は、人気ゲーム「スーパーマリオ」のコースを自分で自由に作って遊べる「Nintendo Switchゲーム」。プログラミングそのものを学べるわけではないですが、ゲームを通して自分でマリオのステージをデザインして論理的思考や問題解決能力・創造性を養うことができます。 これらのソフトは、楽しく学びながらプログラミングの基礎を理解するのに役立ちます。それぞれのソフトには独自の特徴があるため、お子さんの興味やレベルに合わせて選んでみてください。
これらのゲームソフトは、遊びの中で楽しくプログラミングの基礎が学べるので学習は苦手だけどもゲーム大好き!なお子さんにはぴったりの学習方法です。お子さんの興味やレベルに合わせて選んでみてください。
プログラミング学習の準備として、本を活用してみるのもおすすめです。
小さいお子さんでもわかりやすく書かれたプログラミング教材や絵本が発売されています。これからプログラミング教育を控えている小さいお子さんはもちろん、プログラミング授業は始まっているけど、自宅でも振り返り学習をさせたい方にもおすすめです。
「ルビィのぼうけんシリーズ」主人公(ルビィ)が、宝石集めをするなかで、プログラミングに必要な考え方にふれる絵本物語。後半には練習問題も用意されているので単に読むだけでなく、物語で学んだ概念を練習問題で応用してみることで、お子さんの理解がさらに深まります。プログラミング学習の準備としてもおすすめ。
主人公(アベベ)は、ドドジ王国で立派な王になるため、父の残したプログラムに挑戦する旅に出る物語。プログラムを読み解いてすごろくのようなマスの上を旅するアベベを動かします。手順やルールを筋道立てて考える力(プログラミング的思考)が自然と養われ、「変数」や「順次処理」「条件分岐」といった基本的な考え方から「スタック」など少し難易度の高い概念まで、遊んでいるうちに自然と身につけられます。
人気ゲーム「ポケモン」のキャラクターと一緒に、図形やパズル、迷路で遊びながら、プログラミング的思考力を自然と習得できる学習ドリル。ポケモンのタイプを活かした問題や、可愛いキャラクターの間違い探しだったり、ポケモン好きなお子さんはもちろんそうじゃないお子さんもドリルを進めていく中で楽しくプログラミング的思考を身につけることができます。
Scratchのサンプルプログラムがたくさんつまった事例集。かんたんなサンプルから、教科別のサンプルやゲームなど100例もの事例が収録されています。漢字にはルビがついているので、漢字の読めない小さいお子さんでも使えます。学校の先取り学習として活用してみるのも◎
東京・秋葉原に本社を置くゲーム制作会社「アソビズム」が本気でつくった、Scratch向けのプログラミングドリル。シューティング、アクション、格闘、釣り、レース、RPGなど全10本の本格ゲームが作れます。スクラッチの基本を勉強して次のステップアップとして遊ぶにはぴったりの学習ドリルです。
Pythonについて何も知らないプログラミング超初心者向けでもわかるように作られた学習本。対話形式でイラストを交えながら、Pythonの基礎知識を解説しています。初めてでも安心して学習できるよう基本文法もしっかり解説してくれているところがポイント!サンプルもあるので読むだけでなく実際にプログラム体験もできますよ。Pythonの先取り学習にいかがでしょうか。
このほかにも、プログラミングを楽しく学べる本はたくさんあります。
本の選び方のポイントとしては、小さいお子さんならイラストなどがたくさん使われているものや難しい表現や文字が書かれていない絵本タイプが良いでしょう。また、読むだけでなく練習問題や実践問題のように読みながら考えさせるような本の方がお子さんの身につきやすいです。
パソコンだけでなく、タブレットやスマホに対応したプログラミング学習アプリがたくさんリリースされています。
代表的なオンライン学習サイトやアプリは以下になります。
「DeNAプログラミングゼミ」は、IT企業でもあるDeNAが提供する、子供向けプログラミング学習アプリ。ビジュアルプログラミングを使った学習がメインで、オリジナルの作品づくりを通じて楽しくプログラミングの基本概念が学べます。ブロックをくみ合わせて課題をクリアしていくので操作も遊び方も簡単。 またパソコンの使いすぎを防止するために1日に学習できる時間の設定ができる機能もついているので保護者の方も安心して使わせることができます。
「Progate(プロゲート)」は、プログラミング初心者向けの学習アプリです。Web開発コース、データ分析・機械学習が学べるコース、Pythonを使ったコース、Webサイト制作コースの他にもさまざまなコースがあり、Python以外に、HTML & CSS、JavaScript、Ruby、Java、Go、SQL、PHPといったさまざまな言語を学べます。無料版は、全レッスンの基礎レベルのレッスンと有料会員レッスンの冒頭までプレイできます。
「グリコード」は、お菓子で有名な江崎グリコが作った小学校低学年向けのプログラミング学習アプリです。実際にグリコが販売しているお菓子を使ってルールに従って並べてゴールを目指していきます。簡単な操作で小さいお子さんでも遊びながらプログラミングの基礎的な考え方を学習ができます。
「Pythonプログラミング入門」は、プログラミング関連の3択クイズに答えていくだけで、プログラミングの基礎が身につく無料アプリ。出題形式が選択式なので電車通学中の空き時間を有効活用できます。演算・変数、条件分岐・繰り返しなどPython(パイソン)関連の問題をメインにプログラミングで大切な基礎を理解できます。中学生以上向けのアプリです。
「本格プログラミング学習-エンジニア大学-AIサポート付き」は、プログラミング学習ができる無料のiPhone・iPad専用アプリです。ミニ学習と実践形式クイズの形式で用意されていて、進めることができ、HTML&CSS、JavaScript、PHP、Pythonの4つのプログラミング言語を学ぶことができます。
以上がプログラミングが学べる学習アプリの紹介でした!
また、最近はお子さん向けのプログラミングスクールの数が増えています。
プログラミングスクールのメリットは、お子さん一人ひとりのレベルや進捗に合わせた指導が受けることができることです。学校授業についていけるだけでなく、先どり学習もできるところがポイントです。大手企業が運営するものから個人が運営しているスクールなどさまざまあります。
また、地方に住むお子さんの場合だと、お住まいの近くにスクールがないといったこともあります。そういった人のために、オンラインで受講できる教室もいくつかあります。 プログラミングスクールの詳細は、「12. 大手企業が運営するプログラミングスクール・講座」で紹介していますのでぜひ自宅学習のヒントにしてみてください。
以上が、お子さんに人気のプログラミング学習方法の紹介でした。
ここからは、お子さんのプログラミング学習におすすめの無料ツールを紹介します。
実際に学校で採用されているツールもあるのでぜひお家学習に取り入れてみてください。
「Scratch(スクラッチ) 」は、子供やプログラミング初心者向けに開発された、無料のプログラミング言語およびオンラインコミュニティサイトです。(プログラミング体験ができるサイト)
指示ブロックを組み合わせてログラミングの基本的な概念が学べるだけでなく、自分のアイデアを視覚的に形にする力も身につきます。直感的な操作で楽しく学べるのが特徴で、無料でかつわかりやすい画面とつかいやすさから日本の多くの学校で導入されています。
「Viscuit(ビスケット)」は、日本で開発された幼児から小学生低学年向けの簡単で直感的なプログラミング学習ツールです。
コードを文字で書くのではなく、自分で描いた絵を使ってプログラムを作成します。自由に絵を描いて動かすことで、楽しみながら論理的思考や創造力を育むことができ、小さいお子さんにおすすめ。Viscuitは教育現場でも広く利用されており、子供たちが自分のアイデアを実現する力を身につけるための優れたツールです。
「Code.org」は、アメリカ発の無料プログラミング学習ツールです。
ゲーム感覚でプログラミング体験ができるツールで、Scratch (スクラッチ)やViscuit(ビスケット)と同じブロック型のプログラミングを使っているため小さいお子さんでも簡単に操作できるのが特徴です。さまざまなプログラミングコースが用意されており、初級から上級まで幅広いレベルに対応しています。ゲームやアニメーション、ロボット制御など楽しいテーマが多く、子どもたちが興味を持って学べるよう設計されています。教育者向けのオンライン教材も豊富にそろっているので、先生の味方にもなるツールです。
「MakeCode」 は、Microsoftが提供するコーディングを学べる無料のオンラインプラットフォームです。
誰でもゲームを作ったり、Minecraft の改造を行うことができます。こちらもブロックベースのプログラミングとテキストベースのプログラミングの両方に対応しています。プレイ中はチュートリアルや親切なガイドもたくさんあるので、簡単に学習を始められるのも◎Webブラウザ上で遊べるため、ソフトウェアのインストールなどは不要でインターネットに接続できる環境があれば、どこでも利用できます。
「micro:bit」は、プログラミング学習ツールとして広く使用されている小型のプログラミング教育用のコンピュータで、プログラミングだけでなく、電子工作の基本を学ぶことができます。
ブロックタイプ(ScratchやMakeCodeなど)とコードを書くテキストベース(PythonやJavaScript)どちらにも対応しているので、初心者はもちろん本格的にプログラミングの実践スキルを磨きたいと考えている人にもおすすめ。学校の授業や家庭学習にもぴったりのツールです。
「プログラミングゼミ」は、DeNAが運営する子供向けの無料プログラミング学習アプリ。(対象年齢は小学生1年生以上)
Scratchと同じように指示ブロックを組み合わせてキャラクターを動かして課題をクリアしていきます。作品づくりもでき、友達同士で共有することもできます。「ソニック」など有名ゲームとコラボしたゲームが公開されているなどお子さんの興味を引くような魅力的なコンテンツがあるのが特徴です。
また、長時間連続して使わせないようにするために1日のプレイ時間を設定できる機能があるなどお子さんの健康や学習効果までも考えられた便利な学習ツールで、保護者の方にとっても使いやすい設計となっています。
「プログル」は、特定非営利活動法人みんなのコードが作った無料のプログラミング教材です。
「算数」と「理科」の大きく2つの授業テーマがあり、算数では多角形をプログラミングで作る学習のほかに、公倍数や平均値、最頻値、中央値の学習とプログラミングを組み合わせた学習が5コースあります。また理科ではmicro:bitとプログル6年理科電気キットを使ったコースが公開されています。無料公開のためお子さんだけでなく大人も利用できる教材です。
以上が、お子さんにおすすめ無料のプログラミング教育学習ツールの紹介でした。
日本では、さまざまな企業や団体がプログラミングスクールや講座を開いています。そこで今回は、大手企業が運営するプログラミングスクールをピックアップしたので紹介していきます。
「プログラミング教育 HALLO」は、株式会社やる気スイッチグループが運営する年長・小学生・中学生向けの本格プログラミングスクールです。
少人数制が特徴で、お子さんのレベルに合わせたレッスンが受けられることで有名です。学校に通うスタイルとオンラインで受講するスタイルの2通りあります。教材には 『Playgram™(プレイグラム)』を採用しており、ビジュアルプログラミングからタイピング、プログラミングの基礎、Python を使ったテキストコーディングといったお子さんの理解度や意欲に合わせて段階的にプログラミング学習を進めることができるところもポイントです。
「Tech Kids School (テックキッズスクール)」は、サイバーエージェントが2013年に設立した小学生のためのプログラミングスクールです。
「テクノロジーを武器として、自らのアイデアを実現し、社会に能動的に働きかけることのできる人材」の育成を目指してこれまでに3万人以上の小学生にプログラミング学習の機会を作っています。スクールでは、学年や習熟度に合わせて様々なプログラミングツールを用いた学習があり、「Scratch」などのビジュアルプログラミング言語以外に「Swift」や「C#」といったテキストプログラミング言語を使った学習ができます。スクールだけでなく、生徒さんとその兄弟・お友達も参加できる課外イベントやコンテストも定期的に開催されています。
「QUREOプログラミング教室」は、小学生から高校生を対象とした本格プログラミングスクールです。
教材には、サイバーエージェントグループ会社が開発した小学生向けのオンラインプログラミング学習サービス「QUREO」を使っています。ほかにもパソコンに慣れていないお子さんも楽しくプログラミングが学べるよう、Minecraftをつかった教材もあります。また、2025年から始まる新大学入試を見据えた本格カリキュラムが取り入れられているところや、授業一人ひとりに合わせた個別指導や「プログラミング能力検定」の範囲を学べるところも特徴です。
「ベネッセ 進研ゼミ小学講座 プログラミング講座」は、進研ゼミ小学講座内にある本格的なプログラミングを学べる有料オプション講座です。
講座では、Scratchを使ってアニメやゲームを作成する学習(プログラミング学習)とパソコンの使い方や検索方法など「情報」の学習が含まれています。進研ゼミで使う「チャレンジパッド」かおうちのパソコンどちらからでも受講できます。進研ゼミを購入している人で、Scratchの学習をさせたい、初心者でも分かりやすく、基礎から丁寧に教えてくれる講座を受けたいお子さんにはぴったりです。
「Life is Tech ! School(ライフイズテックスクール)」は、中学・高校生を対象にしたIT・プログラミングスクールで、「オンライン学習」と「キャンプ形式の集中学習」の2つを組み合わせたカリキュラムが特徴です。
「パソコンに触れたことのない初心者でも基礎から始めてリリースできるまでの実力がつく」とサイトにも書かれているように、1年を通して自分のオリジナル作品を実際にリリース(公開)することを目標に学習を進めていきます。プログラミングスキルだけでなく、自分のアイデアを形にする創造力や問題解決力、実行力などこれからの時代を生きる上で大切な力を伸ばすことのできる実践的なカリキュラムが用意されています。またこのスクールでは、「Google RISE Awards」「EdTechXEurope グロース部門」を受賞するなど、教育プログラムの質の高いことで世界からも評価を受けています。
「コードオブジーニアスジュニア」は、ナンバーワンソリューションズが運営する小・中・高向けのプログラミングスクールです。
小学校向けには、タイピングの基礎練習やプログラミングの概要を学ぶ「ベーシックコース」、長文タイピング練習やScratchを使ったプログラミング基本な概念を学ぶ「アドバンズコース」、英短文のタイピング練習やJavaScriptやPythonの基礎文法、mblockを使った学習をする「エキスパートコース」の3種類があります。中高生向けになるとJavaScript、HTML、CSS、Unity、C#、NodeJS、Python、Djangoといった本格的なプログラミング言語を使った学習が用意されたコースも用意されています。
「富士通オープンカレッジF@IT Kids Club」は、富士通ラーニングメディア株式会社が運営する小中学生向けのプログラミングスクールです。
「スクラッチコース(小1〜3年生向け)」「ロボットプログラミングコース(小3〜5年生向け)」「テキストプログラミングコース(小5年生〜)」の3つのコースがありタイピングがまだできない小学低学年から「Python(プログラミング言語)」を使ってアプリケーションを作成するなど本格的なプログラミング学習ができます。豊富な経験と実績を持つ講師がオリジナル教材を使って楽しく分かりやすく指導してくれます。
「デジタネ」 は、エデュケーショナル・デザイン株式会社が運営するプログラミングスクールです。
Scratchの他に、マイクラッチ(ブロックを組み合わせるプログラム)から上級者にはRoblox(ロブロックス)を使った学習やJavaScriptやHTML&CSSといった本格にコードを書いてプログラミングする学習など100以上のコンテンツが用意されています。またデジタネを利用しているお子さんを対象にプログラミングコンテストも開催されています。
以上が、大手企業が運営するプログラミングスクール・講座の紹介でした。
プログラミングをもっと極めたい、今の自分のプログラミングスキルがどれくらいなのか知りたいお子さんには、プログラミングの検定や資格があるので力試しとして活用してみるといいでしょう。
お子さん向けのプログラミング検定や資格はいくつかあるので次の段落で紹介していきます。
「ジュニア・プログラミング検定 Scratch部門」は、Scratchを使用したプログラミングスキルを測定し、子どもたちがプログラミングのスキルを客観的に評価するための検定試験です。
試験はScratchを使って、問題文であたえられた条件を満たした「解答」となる物語やゲームを作成する実技試験です。「Gold(1級)」「Silver(2級)」「Bronze(3級)」「Entry(4級)」の4つの級がありそれぞれ得点率が60%以上で合格となり合格者には認定証が渡されます。
「プロ検(プログラミング技能検定)」は、小学生・中学生・高校生・大学生(専門学校生)だけでなく社会人も対象としたプログラミングの基礎となる知識を測るための検定試験です。
プログラミングの基礎から応用まで、幅広いスキルを評価するための検定試験です。検定は毎月開催されています。受験できる級は「レベル1」から「レベル6」まであり、出題形式もScratchと同じようなビジュアル言語や JS / Python / Java といったプログラミング言語を書く形式、どちらにも対応しているので、初心者から上級者まで幅広い人が受験しています。なお、プロ検では2022年から高校で必修化された「情報Ⅰ」に含まれているプログラミング領域の基礎知識を網羅しています。
「日商プログラミング検定」は、日本商工会議所が主催するプログラミングの検定試験です。
初心者から上級者まで幅広い人を対象とした試験です。「ENTRY」「BASIC」「STANDARD」「EXPERT」の4つのレベルがあり、それぞれ出題形式が異なります。なお、STANDARDとEXPERTでは、知識問題だけでなく、課題に対してプログラミングしその結果を自動判定する革新的なシステムを使った実技試験があるのが特徴です。日商が運営しているため、信頼性と認知度も高く、多くの企業や教育機関で評価されている検定です。
プログラミング検定や試験は、お子さんの実際のプログラミングスキルを証明するための機会となります。またお子さんのプログラミング学習の成果がわかりやすく、今後の学習目標にもなるのでぜひ挑戦してみてください。
日本の教育現場では多くの教師がプログラミング技術に関する十分な知識がない、勉強するための時間がないといった課題点が残っています。そこで先生向けにプログラミング教育を指導するために有益な情報が載っているサイトや研修を受けれるようなサイトが増えています。
今回、教師の方におすすめする有名プログラミング教材やサイトとその他の教材紹介します。
先生方におすすめのプログラミング教育関連の教材やポータルサイトはこちらです。
そのほかにも、GoogleやMicrosoftといった有名なIT企業が先生向けにすぐに活用できるようなプログラミング教材を無料で公開しています。
「CS First」は、Googleが小学校3年生から6年生向けに作ったWebブラウザ上で学べる独自の学習教材です。
Scratchをベースにしているので、お子さんも楽しくプログラミングの基礎を学べる内容になっています。無料で公開されているのでアカウントを作成すれば誰でも利用ができます。先生はアカウントにログインすると、CS Firstでクラスを作ることができ、生徒の進捗状況や作成したプログラムを確認できる機能があるのが特徴です。 また、授業へスムーズに展開ができるよう、教員向けにCS First の使い方や活用方法をまとめたオンライントレーニングも用意されています。
Microsoftでは、2024年6月から教育者が授業などで利用できる生成AIのツールキット「Unlocking Generative AI Safely and Responsibly(生成AIを安全かつ責任を持って活用するために)」の日本語版が無料公開されています。
この教材では生成AIの基本的な理解や、的確な回答を得るためのプロンプトの使い方、個人のデータやプライバシーの保護について学ぶことができます。
以上が、教員向けおすすめプログラミング教育の教材・ポータルサイトの紹介でした。
参考までに、全国さまざまなところでプログラミングに関連するコンテストやワークショップ・イベントが行われているので有名なコンテストやイベント情報についても紹介していきます。
日本全国のさまざまなところでプログラミングコンテストや大会が開催されています。
一番大きい全国大会レベルになると、地方大会で予選を行い、優秀な人は全国大会に出場できるといったルールもあります。またお子さんだけでなく、大人も参加できる本格的な大会もあり、優勝や最優勝をとると、豪華な景品がもらえることや、作ったプログラミング案が企業に採用されて実際に製品化や実用化されることもあるようです。
今回は有名な大会だけを紹介しましたが、他にも各都道府県に住むお子さん限定のコンテストや大会も開催されています。コンテストや大会は、お子さんにとって挑戦や成長できる場であり、今後の進路やキャリアにも良い影響を与えてくれる経験になるのでおすすめです。
プログラミングに関するワークショップも全国各地で開催されています。
お子さんの年齢やスキルによって内容は変わってきますが、初心者向けのワークショップでは、アルゴリズムや変数、条件分岐、ループなどの基礎学習や、Scratchなどのビジュアルプログラミングを使ったゲーム作成が多いです。また中級・上級レベルのワークショップではテキストプログラミング(本格的にコードを書く)を使って、複雑なゲーム作成をする内容もあります。
ワークショップでは、単にプログラミングのスキルを学ぶだけでなく、お子さんの総合的な成長につながる貴重な経験にもなります。お子さんの年齢やスキルに合わせたワークショップを探してぜひ参加してみましょう。
そのほかにも、1日だけプログラミングを体験できるような限定イベントも開催されています。
自宅にパソコンやタブレットがない、Scratchを使ったことがなくてお子さんへの説明が難しいといった人は、こういった体験会イベントは気軽に参加して試せるのでおすすめです。 イベントは期間限定イベントから毎週土日に開催されているものまで、たくさんあります。またスクールだけでなく個人でイベントを開いているケースもあります。
費用も無料から数千円ほどで参加できるので気軽に参加できるところがポイントです。
以上が、プログラミングに関するコンテスト・ワークショップ・イベント情報の紹介でした。
ここまでは、日本のプログラミング教育について詳しく解説してきましたが、世界と比べて日本のレベルはどれくらいなのか気になりますよね。
今回、筆者が独自で調べた情報と、OECDが世界の15歳の子供を対象に行った学力調査(PISA調査2022年※)の結果から日本と世界のプログラミング教育の取り組みの違いや学習レベルについて比較をしていきます。
まずは、プログラミングやICT教育を先進的に行っている国と日本を比較していつごろからプログラミング教育を導入したのか調べてみた結果がこちらになります。
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エストニア |
2012年 幼稚園から高校までのプログラミング教育を開始 |
イギリス |
2014年 5~16歳の「Computing(コンピュータ科学)」が導入 |
シンガポール |
2014年 初等教育は必修ではない。中等教育で「Computer Applications」が必修教科 |
フィンランド |
2016年 7歳~16歳でのプログラミング教育を必修化 |
韓国 |
2007年 中学・高校で導入 2017年 小学校で導入 |
オーストラリア |
2017年 8歳~13歳のプログラミング教育を必修化 |
日本 |
2020年 小学校で必修化 2021年 中学校で必修化 2022年 高校で「情報I」が必修化 |
・参考:文部科学省「諸外国における プログラミング教育に関する調査研究」
・参考資料:総務省「教育・学習分野の情報化に係る国内外の動向と先進事例」(pdf)
エストニアではなんと10年以上前の2012年から、フィンランドでは2016年からなど北欧諸国では小学校でのプログラミング教育が導入され、カリキュラムも充実しています。これに対して、日本は2020年にようやく必修化がされたばかりです。
このように、導入タイミングという点でいうと、日本は遅れていることがわかります。
プログラミング教育にパソコンやタブレットといったICT機器は欠かせないアイテムです。実際にお子さんは授業でどれくらい利用しているのかOECDの調査(PISA調査2022年※)があるので比較をしてみましょう。
・出典:⽂部科学省・国⽴教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査PISA2022のポイント」(pdf)
「国語」「数学」「理科」の授業でICT機器をどのくらい使いますか?という問いに対して、日本の結果はOECD諸国と比べても低いことがわかりました。
最後に、プログラミングスキルについて、お子さんはどれくらいの自信があるのかを調査した結果です。
「デジタル・リソースを使うとき、あなたは次のようなことがどのくらいできますか。」の質問に対して日本の結果は世界平均より下回っていました。
・出典:⽂部科学省・国⽴教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査PISA2022のポイント」(pdf)
調査した2022年は、日本ではプログラミング教育がはじまって2年たったころで、教育現場が新しいカリキュラムや教材に適応するには時間がかかります。おそらく、当時の学校教育は先生たちが手探りで行っていたところも多く、実践的なプログラミング経験が十分にできていなかったことも考えられます。現時点では低いスコアになっていますがあまり悲観的に考える必要はありません。
世界と比べて日本のプログラミング教育は、まだはじまったばかりということもあって、実践的なスキルの育成面や教師の知識不足などの課題が残っています。教育内容の強化や教える側の専門性を上げるための研修も必要でしょう。
今回は、「プログラミング教育」について解説してきました。
プログラミング教育は、お子さんが未来のデジタル社会に対応できる力を育てるために始まりました。日本では2020年から必修化が始まっています。プログラミング教育は意味ないのでは?といった声もありますが、全く無駄ではありません!パソコンの基本操作や情報知識が身につくだけでなく情報を活用するための論理的な思考力や新しいアイディアを創造していく力など、業界に限らずこれからのデジタル社会で生きていく上でだれもが必要になるスキルを身につけることができます。
実際に小学校では、プログラミングを書くのではなく、各授業の中で、パソコンを使わない方法やブロックタイプのプログラミング言語を使った学習を通してプログラミング的思考力を学んでいます。中学校になると、「技術・家庭科」の中で行われており、ScratchだけでなくPythonなどのテキストプログラミングを書く授業もあります。高校では自分たちでテーマを作ってチームで取り組む授業が増え、アルゴリズムや条件分岐など本格的なプログラミングを学んでいきます。
このように、プログラミング教育はスタートしたものの、「教員人数やスキルの不足」や「教育格差」などたくさんの課題が残っています。これらの問題を解決するためには、自治体や学校だけでなく、文部科学省や企業・NPO法人などの協力がより一層必要となっています。
最近は、プログラミング教育を普及させるために、企業やNPOが連携して夏休みのプログラミングキャンプやコンテスト、オンライン学習サイトなど、さまざまな形でプログラミングに触れる機会が増えています。また、オンラインスクールや自宅でできる無料のプログラミングツールも増えているため、近くにスクールがないと諦めているお子さんも、手軽にプログラミングを学べる環境が整いつつあります。
今回、紹介したプログラミングスクールや家庭学習のポイント、おすすめの無料ツールなどをぜひ参考にしていただき、お子さんのプログラミング学習のサポートに役立ててみてください。
メディアライター兼「ぱそメモkids」運営者
エンタメ会社で広報を経験し、現在は株式会社セナネットワークスでメディアライター兼広報として勤務。同社では2021年にNintendo Switch初のタイピングゲーム「タイピングクエスト」を開発・発売。プログラミング・システム開発を事業とする企業として、プログラミング教育の更なる普及への貢献の思いでオウンドメディア運営をスタート。
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